ビジネス解説

【メディア事業の手本】エイチームのメディア事業が驚異的な成長を遂げているので徹底解剖してみた【2019年度版】

エイチーム経営分析2019

昨年(2018年)、東証一部上場企業のエイチームの決算説明書を元に、同社のアフィリエイト事業を解説した記事がとても好評でした。反響の一部をご紹介します。

今回は、2019年9月に発表された決算資料を元に、この1年間でエイチームのメディア事業(ライフスタイルサポート事業)がどのように進捗したのかを解説しようと思います。メディア事業の作り方、ポイントについては重複になってしまうので、今回は割愛します。宜しければ、ぜひ昨年の記事をご参照ください。

それでは、始めていきましょう。

エイチーム社 ライフスタイルサポート事業の経営分析(2019年度)

まず、エイチームのメディア事業がどのような領域で展開されているかを共有します。

メディア事業のセグメントメディア事業のセグメント

上記の「デジタルマーケティング支援ビジネス」という括りが、同社のメディア事業です(2019年度の決算以降、この名称に変更するようですので、この記事では従来用いていたライフスタイルサポート事業として解説します)。アフィリエイト以外にも、サプリの販売や写真撮影サービスなど、関連するサービスを展開しているため、こういった名称に変更していく模様です。

ライフスタイルサポート事業の事業領域は、大きく以下の4つに分けられています。

・引越し関連事業

・自動車関連事業

・ブライダル関連事業

・金融メディア事業

それぞれ代表的なメディアは、このようになっています。

・引越し関連事業…引越しの一括見積もりサービス「引越し侍

・自動車関連事業…中古車買取・査定の一括見積もりサービス「ナビクル

・ブライダル関連事業…結婚式場比較・送客サービス「ハナユメ

・金融メディア事業…キャッシング比較・送客サービス「ナビナビキャッシング

それぞれの売上の内訳は、後ほど見ていきましょう。

売上・利益の稼ぎ頭となったライフスタイルサポート事業

まず、2019年度のエイチームの決算サマリーをご覧ください。

エイチーム 通期決算サマリー(2019年度)エイチーム 通期決算サマリー(2019年度)

グループ全体の売上371億円、営業利益28億円のうち、ライフサポート事業部はなんと売上の60%を占めるまでに成長していることが分かります。

2019年度のライフスタイルサポート事業の売上は225億円、セグメント利益(事業部の営業利益)は31億円となっていて、昨年対比(Year on Year)で売上は+18%、利益は+2%成長しています。利益は先行投資のためほとんど横ばいとなっているようですが、それにしてもメディア事業で売上225億円は凄まじい額ですよね…夢があります。

ライフスタイル事業部の売上、利益の推移をグラフで見ると、このような状況です。

ライフスタイルサポート事業 業績推移ライフスタイルサポート事業 業績推移

キレイに右肩上がりですね。四半期(3ヶ月)で50〜60億円程度の売上を作っているのは圧巻です。事業利益率は12.8%と、すごく高いわけではありませんが、投資を行いつつ、しっかり利益を出している点はさすがです。

さて、それでは領域別の売上構成を見ていきましょう。

エイチーム  サブセグメント別四半期推移エイチーム サブセグメント別四半期推移

ご覧のとおり、引越し領域と金融領域の2つが、ライフスタイルサポート事業の成長を牽引していることが分かります。2019年度のQ4(5〜7月の3ヶ月間)のそれぞれの売上額を定規で計ってみると、おおよそ以下の通りです。

・引越し関連事業…17.1億円

・自動車関連事業…9.4億円

・ブライダル関連事業…13.1億円

・金融メディア事業…19.5億円

それぞれ、凄まじい額の売上ですね。売上が伸びているところから、Googleのアップデートの影響は軽微だったようです。

エイチームのメディア事業のビジネスモデル

ところで、エイチームはどうやって稼いでいるのでしょうか?

ビジネスモデルはシンプルでして、ユーザーとクライアントをマッチングする、リボンモデルの典型例ですね。

具体的には、TVCMやアフィリエイト広告等、あらゆる手法でエイチームが運営するWebサイトにユーザーを集客し、サイトを利用してもらって、エイチームの各クライアント(引越し会社、中古車販売会社、結婚式場運営会社、消費者金融会社)に送客し、送客報酬をもらうというビジネスモデルです。

ただし、サービスによって、報酬発生の成果地点が異なるようです。ビジネスモデルを図示したスライドがありますので、こちらをご覧ください。

エイチーム ビジネスモデルエイチーム ビジネスモデル

左の青色の部分がメディア事業を示していますが、A.メイン収益のビジネスモデル(実践矢印)と、B.サブ収益のビジネスモデル(点線矢印)の2つに分かれていますね。

違いは、報酬を受け取るタイミングです。Aは見込客をクライアントに送客した時点で成果が発生しますが、Bは見込客をクライアントに送客し、その顧客がクライアントのサービスを使った後に、エイチームに成果報酬が発生するというものです。

具体的には、おそらくですが、引越し侍やナビクルは送客報酬ですが、ナビナビキャッシングは成果報酬、ハナユメは送客+成果報酬の両方ではないかと予想します。このように、対象業界の慣習に応じて、自社のビジネスモデルを柔軟に変えているのです。

エイチームのメディア事業のKPIと成長の秘訣

そして、例によって、ライフスタイルサポート事業のKPIが公開されていますので、見ていきましょう。

ライフスタイルサポート事業 主なKPI推移ライフスタイルサポート事業 主なKPI推移

まず、昨年同様、用語の確認から入ります。

・利用件数
 各サービスの利用件数のうち、売上が発生した件数の合計

・ARPU(Average Revenue Per User、アープやエーアールピーユーと呼ぶ)
 利用者1人・組あたりの売上高=セグメント売上÷①利用件数

・CPA(Cost Per Acquisition、シーピーエーと呼ぶ)
 顧客獲得1人あたりの広告単位=広告宣伝費÷①利用件数

このARPUとCPAの差分が、獲得顧客1人あたりが生み出す利益額となります(これを、ユニットエコノミクスが成立している状態と言います)。

さて、左側のグラフをみると、利用件数(棒グラフ)が伸びていて、またARPU(赤色の折れ線グラフ)とCPA(青色の折れ線グラフ)の差分が広がっています。一方で、右側のグラフをみると、粗利率は40%程度と変化はないですが、粗利額が急増していますよね。これは、エイチームの経営努力が功を奏していると見て取れるのですが、どのような仕掛けがあるのでしょうか。

まず、利用件数が増えると、一般的には広告費が増えるので、CPA(顧客1人あたりの獲得コスト)は増えます。でも、昨年対比のCPAの上がり幅よりも、ARPUの上がり幅の方が大きいですよね。粗利額が大幅に伸びていることからも、これは明らかです。すなわち、エイチームが、顧客1人あたり獲得の価値を高めていると言えるのです。

ARPUを高める2つの施策

僕の仮説も含まれますが、エイチームは以下の2つの施策を打っていると思われます。

①他サービスのクロスセル

②ボリューム増による単価upの交渉

①他サービスのクロスセルについて。

上記スライドの左下部分の注意書きに、「※同一利用者が複数サービスを利用した場合、獲得コストベース」と記載があります。これは、たとえばナビクルを使ったユーザーに対して、ナビナビキャッシングを使ってもらうよう、ナビナビキャッシング側がDMを送るイメージです。この場合、ナビナビキャッシングには原則、広告費用が発生しません。

また、下記スライドをご覧ください。

相互送客シナジー相互送客シナジー

これについて、エイチームの2019年の決算説明会の質疑応答にヒントが書かれています。

Q.決算説明資料12ページ、既存事業の相互送客シナジーについてわかりやすい書いてあるが、具体的に数字で表せるクロスセス、カスタマージャーニーがあれば教えてほしい。

A.(林)概算で全部合わせると、月間約1億円の売上貢献がある。新たに集客コストがかからないため、我々にとって利益の寄与が大きい。

顧客1人に直ぐにエイチームのすべてのサービスを利用してもらうことはさすがに現実離れしていると思いますが、中長期的な時間軸で観れば、顧客を囲い込むことを目指しているのでしょう。

そして、②ボリューム増による単価upの交渉について。

これについても、エイチームの2019年の決算説明会の質疑応答にヒントが書かれています。

Q.今期、ライフスタイルサポート事業セグメントは10%増収にとどまっている。タイミングもあると思うが、(新規事業にかける)コストに対する増収効果は今のところ見込んでいないのか。

A.(林)はい。まず契約をしていただくことが、ARPUが上がる仕組みになる。その後、単価アップのフェーズに入っていく。(例)月1万件集客できたら、単価3,000円から4,000円になる。

これは、プラットフォーマー側の影響力が高くなることにより、クライアントに対してより有利な取引条件を交渉するというスタンスです。こういった交渉は、プラットフォームビジネスでは常套手段です。

以上2つの施策によって、CPAをある程度抑えつつ、ARPUを大幅に上げているのだと言えます。

ブログアフィリエイトに役立てるポイントまとめ

以上が、エイチームのアフィリエイト事業の経営分析の概要でした。最後に、上記を踏まえてブログアフィリエイトに役立てるポイントをまとめてみたいと思います。SEO的なテクニック論を除くと、大きく以下の2点です。

1.集客したユーザーへの価値を高める

2.クライアントとの関係構築、営業努力は不可欠

1.集客したユーザーへの価値を高める について。

せっかく集客したユーザーに1つのサービスを利用してもらって終わりでは、自転車操業のように、次から次へとユーザーを集客し続けなければなりません。でも、集めたユーザーを自分のファンにできれば、自分で新たに創り出した商品や、紹介するサービスを使ってもらえるかもしれません。ユーザーと長期的な関係性を創るようにしましょう。言い換えれば、ユーザーのLTVを高めるということです。

2.クライアントとの関係構築、営業努力は不可欠 について。

クライアントに対して良好な関係性を構築し、交渉して報酬単価を上げてもらうことは、収益性を上げる意味で大事です。アフィリエイトビジネスでも、ASP経由でクライアントに対して積極的に提案してみてはいかがでしょうか。僕は広告主の立場でアフィリエイトビジネスに向き合っていたことが長いですが、広告主も積極的にアフィリエイターと関わり、共にwin-winの関係を構築したいと考えているものなのです。

最後に、他商品を紹介するアフィリエイトビジネスのみならず、自分の商品を創って売るという自社ビジネスを構築してみたい人には、まずは事業会社で経験を積むことをおすすめします。会社に所属すれば、スケールの大きなビジネスの経験を積むことができますし、もし失敗しても自分の懐は痛まないですから、その意味でリスクはゼロです。

Webマーケティング職にキャリアチェンジしたい場合は、未経験でもWebマーケティング職に転職できます【元No.1転職エージェントが徹底解説】という記事を書きましたので、こちらもご覧ください。